「不登校・ひきこもり」
今回の展覧会はマイノリティと呼ばれる人たちとの関わりの中で何かできないだろうかという話をアーツ前橋からいただいたことに始まる。そして、南前橋にある「アリスの広場」という、不登校・ひきこもりと呼ばれる人達の通うフリースペースに通うことにした。「アリスの広場」は決まりがなく、予約しなくてもふらっと行って自由に過ごしていいし、集団行動のようなものがない。とてもゆるくて、ある意味何もしていない。そのことが、はじめのうちはもどかしく感じたりもしたが、通っているうちに私もそのように過ごせるようになった。ある問題に対して答えを探したり見つけたりするその前に、無駄とも思える時間を過ごすことが彼らには必要で、そのことが「アリスの広場」の重要性だとも思うようになった。そう思うと、私が作品を生み出そうとしている様子が滑稽に見え、展示では私が体験した時間をそのまま断片的に切り取って提示することにした。
展示空間は私が体験した日記であって、彼らとの距離感のように見えにくいかもしれない。卓球があったり、石が転がっていたり、作りかけでできていなかったり。それでも自殺をしようと思った場所まで一緒に出かけ、引きこもっていた部屋を一緒に再現し、家とアリスしか行けない子が展示を見に来てくた。とてもエキサイティングだったが、よく見ないと見えないかもしれない、うまくできなかったのかもしれない。最後には、「協働なんてすぐにはできない」ということが展示されているのだが、「できない」というその手応えのなさも実は大切なのかもしれないというのが今回の伝えたかったことだ。
明日そのことについて話そうと思う。
「無意味に見える行為」「居心地のいい場所」「答えが出ないこと」その3つのことについての話。
トークセッション「社会における場づくりとアートの可能性」
8月28日(日)13:30-14:30
滝沢達史(アーティスト)
佐藤真人(NPO 法人 ぐんま若者応援ネット アリスの広場 施設長)
関根沙耶花(サヤカ・クリニック院長)
ゲスト:小山田徹(京都市立芸術大学教授)
モデレータ:茂木一司(群馬大学教授)