クッションとしてのアート

 

私はアートの手法を用いて、癒しと再生の活動をしています。例えば、引きこもりの若者と旅に出かけ、彼らの過去を一緒に作り直したり、原発被害のあった福島県に絵本の家を建てたりしています。そこに至るまでには何年ものプロセスを経て、多くの協力者と一緒に物語を編むように制作をしています。他にも差別問題や過去の戦争など、繊細な問題を扱いますが、政治的な発言ではなく、個人の小さな痛みを浄化することを目的としています。

 

その昔、アートは神や権力を補填する形で発展してきました。近代では経済や政治を補填してきました。現代社会はテクノロジーと密接に結びついており、アートもまた、新たなテクノロジーによって発展しています。我々の意識は、コンピューターの開発によって飛躍的に拡張しましたが、その反面、身体性を伴った経験は希薄になっています。現代は新たな身体性の獲得が求められています。

 

人類が2足歩行を始めてから400万年、我々の身体は長い年月をかけてゆっくりと作られました。しかし、都市基盤の整備によって、水や火の確保が不要になり、コンピューターの情報伝達は会話や買物の方法を大きく変えました。人類が数万年に渡り営んできたライフスタイルは、この100年程で大きく変化したのです。我々はその恩恵に預かりながらも、どこか居心地の悪さを感じています。なぜなら、我々の身体は数万年間変化をしておらず、体は外部へと拡張しているだけなのです。

 

私はこの身体性の回復に興味を持っており、身体拡張の別の方法として空間表現を行なっています。私の制作は協力者と数年をかけて共に進められ、自然環境や古い生活道具が含まれています。制作の目的は私たちのチームが喜びを分かち合うことであり、そのプロジェクトがうまくいった場合には、その共有感覚が鑑賞者の身体へと伝わるように作っています。我々を取り巻く現代の環境はこの先も加速度的に進むと思われます。しかし、動物的な身体はゆっくりとしか変化することができません。アートはその間を埋めるクッションの役割を担うと思っています。そして私のアートもその一部でありたいと思っています。

滝沢達史

1972  横浜市生まれ 

1997  多摩美術大学絵画科油画先行卒業

1999  東京都教育公務員美術教諭 知的障害教育

2009  東京都学校開設準備員 退職

 

[個展]

 

2006    BankART NYK/「絶望の方舟」

2007    Gallery≠Gallery/むこうへ

2012    Steps Gallery /階段を登ったところにある

2014  Steps Gallery/全部

 

[グループ展]

 

2007 アートフロントギャラリー/SLEEP~Are you awake?

2008  BankART /食と現代美術

2009 大地の芸術祭

2011 Living in Arts project/岡山

2012 大地の芸術祭

2012    旅するアート/岡山

2012 岡山芸術回廊

2013 瀬戸内国際芸術祭

2013 喜多方・夢・アートプロジェクト

2014 いちはらアートMIX

2014 森のはこ舟アートプロジェクト

2015 大地の芸術祭

2015 Kamikoani Project Akita 

2015 喜多方・夢・アートプロジェクト

​2016 アーツ前橋/共働としてのアート・表現の森

2016 瀬戸内国際芸術祭/粟島研究所

2017   TURN Fes3

2019  粟島研究所 / 美術・教育・戦争    

         表現の生態系 / アーツ前橋 

 

[スペースデザイン]

2014   Villa Sakura: 客室デザイン / 鎌倉 

2014   Spain Bar Girona / 虎ノ門ヒルズ 東京

2015   のまど間 大山城 / シェアオフィス、鳥取  大山町

2018   ホハル/​ 放課後等デイサービス