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遠い土地からの声

 

2013年、震災の影響がまだ残る喜多方に私は呼ばれた。

この地で作品を作る。しかしその状況を前にして、アートは無力であるように感じた。

私は、この土地を作ってきた先人たちのことを想った。

そして、農家で使われていた古い椅子を探してもらい、それを背負って飯豊山に登ることにした。

結局、その行為は春、夏、秋と4つの季節をめぐり、

出会った人たちと一緒に、この蔵を「絵本の蔵」として再建することにした。

私たちは未来を作りたいと思った。

そして、絵本の蔵の土間を新しくするときに、飯豊山に持って行った椅子を埋めた。

それは、土地をもう一度作り出したいというおまじないのようなものです。

 

それから月日が経ち、スコットランドのアーティスト、ジリアンと一緒に作品を考えることになった。

彼女はこの椅子をめぐるストーリーに共感し、椅子をめぐる新たな旅を提案した。

そして、私たちは両国の土地で見つけた流木で椅子を作り、

スコットランドの文化の象徴であるタータンを持って出かけた。

タータンは単なる模様ではなく、氏族の領土を象徴するものだと聞いた。

私たちは双方の土地にかかわる問題について、自然の声に耳をすますことの大切さを感じた。

 

時節、新たなウィルスの影響で世界は大きく揺らいでいる。

私たちが直接会うことなかったが、

私たちは対話をし、双方の土地の食べ物を交換し、一緒に旅に出かけた。

離れた土地で、同じ行為をしている。

 

土間からは彼女の声と森の音が流れる。

スコットランドでは日本の音が流れる。

 

私たちは会えなくても、信頼関係を育くみ、豊かな時間を経験した。

これからも新しいウィルスの影響は続くと思われるが、

私たちは、静かに耳をすますことに安らぎを覚え、新たな創造を育んだ。

私たちのささやかな行為が、誰かにとっても静かに響いてくれたら嬉しい。

北は遠い土地だが、その地は静かに佇んでいる。

滝沢達史

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遠い土地からの声 「私はどこにいますか?」

 

ジリアン・マクファーランドが遠い土地からこのメッセージを送っています。 

私は作品を通して、物事の本質や存在の変化、時間のつながりについて考えています。

探求することと、そこに至るプロセスが私に制作のアイデアを与えています。

この道程は、見る人と作者の両方を考古学のような物質文化の世界へと誘います。

それは、科学と自然界の両方から、より近づき、つながりたいという欲求を高めます。

このプロジェクトの過程で、パンデミックが地球を行き交い、私たちは気候変動の兆候を目の当たりにしました。

私たちは小さくて脆弱な惑星に生息する複雑な種であり、今は未来に不安を感じているかもしれません。

 

達史とのコラボレーションは喜びであり、遠く離れた土地の声であり、行ったことのない場所であり、

会ったことのない人でありながら、アイデアの共有が私に安心感を与えました。

この共同研究は、共感的であると同時に挑戦的なアプローチで、地理を超えての考察が全体性を生み出しています。 

このプロジェクトを通して、私は以前よりも興味深い世界とつながるようになりました。

気候、景観、経済、精神的および文化的信念、そしてすべての種の健康という、より集合した世界について、

すべての部分と全体を、世界は理解しはじめている。 

 

北をイメージし、文化を超えたアイデアの交換は私の内部コンパスを再調整しました。

私はこれら共同研究のもたらす新鮮さに惹かれています。

達史と私は、同様の視点と生活習慣を持っているようです。

私は、達史が連れて行ってくれる場所を楽しんでおり、

このオンラインコラボレーションは、あなたをどこに連れて行くだろうと想像しています。

 

「地理は、私たちが確信できる唯一のポイントから始まります。それは内部から始まります。

そしてそこから一つの質問が生じます。私はどこにいますか? 」(マラキータラック「北緯60度」)  

 

ジリアン・マクファーランド

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ケールのポリッジ(オーツ麦のおかゆ)

 

私は食べることが好きだ。

このような交流展の場合は、現地に赴き、その土地の風景を見て、土地の美味しいものを食べるのが一番の楽しみである。しかし、今回は行くことも呼ぶことも叶わなかった。

これでは、モチベーションが上がらない。そこで私はジリアンに「まず一緒に食事をしよう」と提案し、食材とレシピの交換から始めた。スコットランドからは「ポリッジ」の食材が届き、日本からは「こづゆ」の食材を送った。ポリッジは牛乳で煮込んで、ハチミツやフルーツなどを載せるのが常らしい。悪くはないが日本の朝食にはどうも馴染まない。そこで、同じく送られてきたシェットランド島のケールの種を育て、かつおダシと豆乳を使った和風のレシピにアレンジした。

 

ジリアンに送った「こづゆ」の食材である「キクラゲ」は英訳すると「雲の耳」となるらしく、ジリアンはそれが気に入ったという。そこで、山に行き、キクラゲを採取してキクラゲ料理も作ってみた。今回はこの「雲の耳」に端を発し、そこから連想される様々なことを会場に配している。

 

私たちが今回着目したのは、我々を取り巻く環境について。それは私たちの体も含めてのことだ。自然を観察し、摂取し、私たちは作られる。当たり前のことではあるが、今回はそれを丁寧に感じたコラボレーションであった。表現することと、料理することと、食べること。

私は食べることが好きだ。

 

滝沢達史

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​精神の<北>へ  2021

​ふたつの流れが出会うところで

Confluence of North : Spirit of North

2021. 6.8- 6.26  Perth Creative Exchange

021.10.3-10.16​     福島県喜多方市南町/二十間蔵・絵本の蔵・南町2850

2021.10.23-10.29   西会津国際芸術村

2021.10.23-11.27   An Lanntair

精神の北へ 2021

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